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その86
詩集の装丁デザイン - 詩集の作り方 [4]
詩集の組版が終わった次は、装丁デザインの工程となる。
出版社に全部お任せするというのが基本ルート。
ただ、自分の胸が違和感を覚えていた。
明らかに他者へまるっとお任せしたであろう装丁から感じるテンションに触れると、同じ事をしたら後悔すると感じた。(もちろん、良いものもある)
この本は、俺の今までの人生が全て詰まっている、詰めるべき作品なのだ。
俺は、
・小学生低学年の頃、描いた絵が大倉山記念館に飾られ、表彰される
・中学校の運動会のしおりの為に、毎回絵を描く事を依頼される
・中学生が終わるくらいまでたくさん漫画を描いていて、漫画家になりたいという夢を持っていた
・両親からの依頼で、何十年も、ギャラを頂きながら年賀状イラストを描き続けている
という人間なので、多少絵に関しては経験や思考を積んで来たという自負がある。
なので、今回の詩集出版プロジェクトを通じて、自分の考えた絵を形にして世に出したいという夢も叶えようと決意する。
こうして、装丁づくりの中の装画に関しては、出版社は頼らず、自分の力で作り上げる事にした。
装丁ができるまでの工程は、次の通り。
[1]インプット
[2]リサーチ
[3]プランニング
[4]下絵
[5]装画制作パートナー探し
[6]ディスカッション
[7]装画完成
[8]装丁デザイン
以下、より詳細に、何をしたのか共有する。
[1]インプット
今回のプロジェクトに限らず、いつか自分の作品を世に出すとは思ってたので、普段からゆるゆるデザイン関連の本は読んでいた。
結局、今回、この道のプロと協業出来たので自分がデザイン作業をする事は無かったのだが、知識が無いと他人に流されるだけになる恐れがあったので、一応仕込んでおいた。

[2]リサーチ
本屋や図書館へ行き、可能な限り、詩集の表紙を見た。
Amazon売れ筋ランキングに並んでる詩集の表紙も見た。
こうする事で、世にある詩集に対するイメージというか、地図が頭の中に出来る。
[3]プランニング
リサーチした結果、多くの詩集のイメージは「難解」「暗い」そして「抽象画」。
だけど、俺の目的は、読者に元気/生きる力を届ける事。
なので、自分は、「易しい」「明るい」そして自分のルーツでもある「(昭和の)漫画」というポジションに狙いを定める。
本編の文章自体も、その想いで書いてきていた。
ここで考えた戦略、計画を、要件定義書にまとめる。
「誰に」「どんな気分になってほしいか」「その為の手段は」など、自分の頭の中を、デザイナー/イラストレーターに共有する為、言語化する。
Amazonに自分の詩集の書影が並んだ時に、他の誰よりも目立ち、Chart1位に駆け上がる事をイメージ。
[4]下絵
この貴重な機会を活かし、絵が好きだった頃の自分の夢も叶えようと、自分で下絵を描く。
『星の王子さま』や『モモ』のように、作品の隅々にまで作者の魂を込めるのだと。
だけど、文章に比べ、絵に関しては過去に歩みを止めてしまったと自分自身が知っている。この先は、プロに任せようと決めた。


[5]装画制作パートナー探し
装画を描いてくださる、漫画的なフラットでかわいいタッチの絵を描けるパートナーを探した。
そんな中、中・高の同級生が営んでいた本屋である、横浜の妙蓮寺にある石堂書店/本屋・生活綴方に今回の出版の報告をしに行った際に出会ったのが、そこに出入りしていたデザイナー伊従史子さん。彼女の画風を拝見した所、まさにこのタッチ!
彼女が僕と同時代に同じ小学校に通っていたと知り、まさに詩集のテーマである「身近な愛を、たいせつに」を体現するご縁だと思い、勇気を出してお願いした。
[6]ディスカッション
伊従さんにお引き受け頂き、装画制作へ向けたディスカッション開始。
こちらの意見を鵜呑みにせず、毎回違った角度からのアプローチを複数提案、Noと言うべき所は言ってくださり大変ありがたかった。
自分一人では決して辿り着けなかったような絵が浮かび上がって来た。
・斜めの構図 : ロケットから噴射される煙の面積が広がりたくさんのモチーフを描けるように。躍動感UP↑↑
・黄色い背景 : 初めて見た時の驚き!常識を覆された
・カバーを外した表紙の絵 : ご購入くださった方にだけ伝わる刺激があったのではないでしょうか

見えない部分にまで行き渡る拘りに頭が下がった。
毎週妙蓮寺のCafeに集い、密に意見交換しながら、伊従さんの手による均整のとれた美しい(かわいい)絵が出来てきた。
ここで、ムクムク、この美を破壊したい欲求が抑えられなくなる。
・岡本太郎も、「芸術は'いやったらしく'なくてはいけない」と言ってた
・黄色、そして赤の効いた、Miroの絵を思い出す

そうだ、詩集『ことばの宇宙飛行士』のカバー前面はPOPSサイド、後面はROCKサイドという計画があったのだ。
伊従さんに、後面には今までの美意識を一部破壊(常識から逸脱)するような強烈な雷を描いて欲しいと依頼する。
俺「SEX PISTOLSのようなROCK感が欲しいんですよね」
伊「PISTOLS通ってないんです。。David Bowieとか?」
俺「うーん、David Bowie展に行く位ではあるんだけど、そんな好きでもない、、」
伊「AC/DC。。」
俺「いいですね!それ!」
伊&僕「サンダーー!!!」
という、同世代ならではのROCK談義に花が咲く(笑)
この会話がツーカーで出来る伊従さんへの信頼度がさらに深まる1シーンだった。
共通のイメージを持つ事ができ、カバー裏面には、表から見てただけでは想像もつかない強烈な赤い雷が。これがROCKだ。
[7]装画完成
シンプルな絵に見えるけど、伊従さんのアイデアが色々詰まっている。
例えば、
・女の子の白い服がロケットの煙と一体化
→完全に伊従さんから出て来た発想で、そのセンスの良さにニンマリ

・カニの表情
→初期は'笑顔'だったのだけど、全体的に「甘い」印象になり過ぎるという事で無表情に変更
・土偶
→日本史をモチーフにした詩が収録されていて、最初は卑弥呼の時代の鏡だったのだがあまり'映えない'感じだったので、伊従さんがお好きだと言う土偶に変更。よく見るとマニアックな形状をしていて、愛を感じる。
・仏像
→これも、自分の中には鎌倉の大仏みたいなイメージもあったのだが、仏要素があればokなので、伊従さんがお好きだというナントカ菩薩を描いて頂いた。密かなる細部の書き込みに気迫を感じる。

詩集『ことばの宇宙飛行士』のカバーは、見開きで一枚の絵。是非、広げて全体像をお楽しみ頂きたい。

今回の本の制作工程で、唯一悔しかったのが、自分の手で装画を描き切れなかった事。もっと絵への学びも続けてたらなと。一方、一番嬉しかったのが、信頼・尊敬できる絵師様と出会い、自分の描きたかった絵が自分の想像を遥かに超えた形になった事。
よく、格闘家が「向き合った瞬間に相手の実力がわかる」なんて言うけど、絵も同じで、描かれたモチーフ1つ見るだけでも、この方は俺の何千倍、何万倍も絵に触れ、考え、手を動かしてこられたんだなと伝わってきて嬉しい思いだった。
絵を描いてくださった伊従史子さんは、同じ時期に同じ小学校に通ってた方。
毎週絵の制作ミーティングでは、会ってる時間の1/3は絵の話、2/3はどんな小学生時代だったか?その後は?など絵とは違う話で盛り上がった。
俺は小学2年生の頃に描いた絵が表彰され大倉山記念館に飾られた事が良い思い出の一つなのだけど、彼女も同じ体験があったとの事。スタート地点が同じでも、小学生時代は絵の教室に通い、美大に進み、プロのデザイナーとなられたその歩み、一貫性をもって積み上げてこられた行動量に頭が下がる想いをした。
こうして、自分の手ではないものの、生まれて初めて「自分の絵」と言える作品を完成させる事ができた。感無量。
[8]装丁デザイン
ここからは出版社が担当。
最初に今の完成版に近いデザインを提案頂いたのだが、自分の中のイメージもあったので試して頂く。
・手元にあった『素敵な日本人』(東野圭吾)の「題名にはないのに表紙には分かりやすく'短編集'と記載がある」のが良いと思った
→表紙にのみ「詩集」と記載頂く

・『素敵な日本人』の題字が大きいのがAmazon映えして良いかと思い試してみる
→なんか、違った。今回は'イラストが魅力的'などなど他者作品のデザインとはそれが成り立つ「前提条件」が違うという事を学ぶ


・背表紙に、自分が創ったロゴを設置してもらう
→本にロゴを設置する人いる?と不安になりリサーチした所、アガサ・クリスティがやっていたので安心。手塚治虫の漫画にもあった。
完成、リリース後
こうして装丁デザインが完成。
そこから先は、出版社による、製本作業。
このような工程を経て、心を込めて本を世に出せた所、詩集『ことばの宇宙飛行士』に触れた小さな読者さまから、素敵な、装画の模写が届いた。
俺も伊従さんも模写を通して芸を磨いて来たのだけど、こうして次の世代に「真似したい」と思って頂けるような影響を伝えられた事が感慨深かった。

これからも、新たな出会いがありますように。
これで、全4回に渡って伝えた「詩集の作り方」は終わりとする。
またここで、二人で会おう。
身近な愛を、たいせつに。
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このサイトについて
詩人・南條雄一の公式ウェブサイト。プロフィール、作品紹介、ブログなど”最新情報”をお伝えします。人生は、推敲し続ける一篇の詩。遅咲き蕾にうるおいを。
南條 雄一について
「身近な愛を、たいせつに」暮らす詩人。絵・音・Webにハマったハマっこ、詩にフォーカスでアラフォーデビュー
詩集『ことばの宇宙飛行士』(2022/4/18 発売) ※Amazon新着ランキングにおいて「詩歌」「現代詩」の2部門で1位獲得!
